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数学ガール/ポアンカレ予想 を読みました。 [科学、数学]



先日買った「数学ガール ポアンカレ予想」やっと読み終わりました。
家にあった、「オイラーの贈物」と、「数学の大統一に挑む」を一緒に読むと「数学者は、世界に橋を架けるのが好き。」というミルカさんの言葉がよく理解できて、いままで消化不良だった「数学の大統一に挑む」の消化も進みました。三角食べは消化に良いかも...

torus.png





ポアンカレ予想の証明は、非常に難解なので、数学ガールではミルカさんでも解明するところまでは行きませんでしたが、x2 をフーリエ展開するとバーゼル問題の答えが導き出せる - 分数の無限級数と円周率に橋を架けられる - というのには、やられました...
x2 のような、ものすごく簡単で見慣れた式を、フーリエ展開するっていう発想はどこから来るのでしょう?


Poincare.png
(ポアンカレの円板とか描いてみても、私には何も来ません)


数学ガールのエピグラフで、ポアンカレが乗合馬車の階段に足を触れたその瞬間、フックス関数に関するひらめきを得たというエピーソードが引用されていますが、フランスの数学者セドリック・ヴィラニも、ポアンカレのひらめきについて次のように語っています。

https://gqjapan.jp/life/business/20170111/cedric-villani
「ヴィラニによれば、ポアンカレこそ数学者が“ひらめき”を得る瞬間を体現している。

ポアンカレは「乗合馬車の踏み段に足をおいた瞬間」や、失敗に飽き飽きして浜辺で過ごしているなかで「断崖を散歩していたとき」にアイディアが浮かんだと書き残している。「置かれている状況からではなく、簡潔に、突然、しかし確信とともにやってくる」のが“ひらめき”だ、とヴィラニ。だからこそ、木からりんごが落ちるのを見て万有引力の法則を発見したというニュートンの話も「あれは作り話ですね」と笑う。」

数学ガールでは、ひらめきについて、「しかし、そのひらめきを生み出すためには、気が遠くなるように泥臭い計算があったのではないか、そしてまた、ひらめきの後にそれを確かめ、定式化し、拡張し、一般化していく果てしない道のりがあったのではないか。」と書いています。

ニュートンについては、ティコ・ブラーエが30年にもわたってためた膨大な観測データと、その膨大なデータから惑星の軌道を計算したケプラーがいて、ケプラーが膨大な計算から求めた法則の背後にある理由に気づき、万有引力の法則を発見したのであって、りんごが木から落ちただけでは何も発見できなかったでしょう。

...というお話を20年ぐらい前、広島大学の松本眞 教授が、されていました。

「リンゴが落ちたって万有引力は発見できないさ」
今の学問、社会のニーズに惑わされてない?
http://www.math.sci.hiroshima-u.ac.jp/~m-mat/NON-EXPERTS/SHIMINKOUEN1999/SUGAKUKAI/res5.pdf

これ、今、読み返して見ると、予言の書だったのかな...
前半は、ニュートンの話だったのですが、後半
「6. 真理は死んだ
僕たちの社会は、「真理」を知りたいという心を失ったように見えます。...
(中略)

先端情報環境学際人間総合政策メディア学部あたりでは、盛んに「社会のニーズに答え
る」研究がされているように見えます。しかし、それらが発信する情報は、ニュートンで
言ったらリンゴの情報のように見えます。みのもんたのワインのように見えます。みんな、
たくさん、新しいんだか古いんだかわかんないようなことを、役に立つ役に立つ時代の先
取り柔軟実学すごいすごい、って宣伝している。
一方で、万有引力の法則を、「知っている」といえるレベルで分かっている人はほとんど
いない。分かっていない。なのに、みんなが分かっていると思っている。初等的知識と思っ
ている。分からないことはブラックボックスに入れて、「とるにたらないこと」と考え、「本質は知っている」と思う。
そういう土壌の社会からは、物理や数学や哲学や神学への畏怖は生まれません。興味も
生まれない。その状態を、僕は「真理は死んだ」と表現したい。それが、学問の深い危機
だと思うのです。」

という、重たい(引力が強い?)話になっています。
最近、日本では、落AIのような、「とにかくビッグデータをディープラーニングでAIしたら何でも答えでま〜す。あなたの仕事は、なくなちゃいま〜す。」のようなものが流行っていて、AI検定とか協会とかも沢山できているみたいですけど、そもそもディープラーニングって何?
毎日のようにarXivに新しい手法の論文でてますけど、確立された技術なの?
日本のハイテク産業ずいぶん衰退してきているけど、こんなのに賭けちゃっていいの?
って心配になります。


最近、こんなのも目につくようになってきたし。そろそろブームも終わりかな?

「AI - その革命はまだ起きていない、そして起きそうもない」
https://qiita.com/KanNishida/items/dfab2a09ff1e07139492
「AIはまるで今の時代の呪文のようで、テクノロジスト(技術者)、アカデミアの人間(学者)、ジャーナリスト、そしてベンチャーキャピタルリストによって日々合唱されています。今までも技術的で学問的な分野が一般の人達に知れ渡るときにみられたように、この単語の使い方にはとてつもない量の誤解が含まれています。
・・・」




深層学習時代の 自然言語処理ビジネス
Preferred Networks 海野 裕也
https://www.slideshare.net/unnonouno/ss-94874532





一方EUでは、Horizon 2020 の中で、数論、群、環などの数学のツール類( LinBox, MPIR, SageMath, GAP, Pari/GP, LMFDB, Singular, MathHub)をJupyter notebookで利用できるようにして、データやコードを研究者間で共有できるエコシステムを作るという地道なプロジェクトをやっているようです。

http://opendreamkit.org/
Open Digital Research Environment Toolkit
for the Advancement of Mathematics
OpenDreamKit.png





しまった、「数学ガール / ポアンカレ予想」を読んだ感想を書こうと思っていたんでした。
8.4.2 言葉を聞く より 「僕は ー ミルカさんに会えてよかった」
結城先生の本に出会えてよかった。


数学ガール/ポアンカレ予想 (「数学ガール」シリーズ6)

数学ガール/ポアンカレ予想 (「数学ガール」シリーズ6)

  • 作者: 結城 浩
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2018/04/14
  • メディア: 単行本



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